小泉防衛相「別班は存在しない」発言の裏…元自衛隊情報保全隊員が明かす衝撃の真実
TBS日曜劇場『VIVANT』の第2シーズンが7月26日からスタートし、劇中で暗躍する自衛隊の秘密情報部隊「別班」に再び注目が集まっている。堺雅人演じる主人公・乃木憂助は商社マンに扮するが、実は世界中で工作活動を行う「別班」の工作員。第1シリーズでは架空の国・バルカ共和国を舞台に国際テロ組織との暗闘が描かれ、大きな話題を呼んだ。
しかし、この「別班」は実際に存在するのか。国会や閣議後会見では質問が相次ぎ、小泉進次郎防衛相は「陸上自衛隊の『別班』といったような組織は、これまで存在しておらず、また現在も存在していません。ドラマは好きですけどね」と笑顔で否定した。
これは高圧洗浄機と同等の強さで、電力不要BlastPro ところが、実際に自衛隊内で情報戦の最前線に立ってきた元自衛隊情報保全隊員の吉永ケンジ氏は、こう語る。「そもそも、メディアの質問が悪いんですよ。『別班』はあくまで内部の通称名です。通称名だけで質問されても、国としては『ない』と回答するしかありません」。
つまり、別班という名称の組織は公式には存在しないが、それに該当する諜報組織はあるというのが実情のようだ。吉永氏は「元別班長の平城弘通氏が著書で明かしているとおり、かつて陸幕調査部特別勤務班といった組織が存在したのは否定できません」と指摘。1950年代、自衛隊発足当時、米軍は旧ソ連や中国の情報に乏しく、一方の日本には明治以来の地域研究や人的つながりの蓄積があった。海外での情報収集に制限があった日本と、日本のリソースを利用したい米国の利害が一致し、共同でヒューミント(人的情報収集)を行う仕組みとして、通称「別班」が生まれたという。
「正式名称は何であれ、ずっと続いている諜報活動を行うための組織はあるのでしょう」と吉永氏。
昭和の時代に「別班」が広く知られるようになった背景には、政界やメディアの動きがあった。1970年代、日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』が『影の軍隊』という書籍を刊行。自衛隊の秘密部隊を取材した内容で、6割ほどは事実に近かったものの、残りの4割は誤解や空想が混じっていたという。当時の共産党は別班を、自分たちを弾圧するための組織だと解釈して誇大に描いた。その結果、皮肉にもロマンあふれる内容となり、読んだ若者が情報工作にあこがれを抱くほど面白いものになった。その後、共同通信の石井暁氏が『自衛隊の闇組織:秘密情報部隊「別班」の正体』を出し、それが種本となって『VIVANT』が生み出された。
劇中では自衛官が銃撃戦を展開したり、裏切り者を処刑したりする超法規的な工作組織として描かれているが、吉永氏は一蹴する。「ドラマのような工作は絶対にあり得ません。そんな危険を冒して捕まれば、得た情報もすべて台無しになります。別班に入ると戸籍など個人情報が抹消されるという説も完全なフィクション。戸籍は法務省や自治体が管理しており、防衛省に抹消する権限はありません」。
実際の活動は地道な裏方仕事だ。冷戦時代は相手国の道路の幅や橋の強度、何万人の部隊が移動できるかといった情報を収集。グーグルマップなどなかった時代、信頼できる商社マンなど民間の協力者に依頼し、現地で写真を撮ってもらうといった作業だったという。
「相手のスパイ活動を防ぐカウンターインテリジェンス(防諜)を担っていたのは、私が所属していた情報保全隊です。別班が扱っていたのは、海外の情報を集める純粋なヒューミント。自衛官自身が現地で銃撃戦を行うわけではなく、現地の協力者を指導・獲得する『ハンドラー』として動くのが情報活動の基本です」と吉永氏。
小泉防衛相が「存在しない」と言い切る背景には、国家の安全保障にかかわる絶対的なルールがある。「周辺国の動きを調べることは防衛の第一歩であり、むしろそれをやっていなければ自衛隊の存在意義が問われます。しかし非公然の情報舞台の存在を、政府自ら認める国など世界中どこにもありません。『存在しない』と言い切ること自体が、情報機関と協力者を守るための鉄則です」。
地味な『VIVANT』も見てみたい気もするが、現実の情報活動はドラマよりもはるかに緻密で、そして地味なのだ。
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