「ミサイルのぬいぐるみ」が土産物に…東浩紀がウクライナで見た“戦争の日常化”
哲学者の東浩紀氏が、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、SNSを通じて戦争がリアルタイムで消費される現代社会に警鐘を鳴らしている。
東氏が実際に訪れたウクライナの都市リヴィウでは、土産品店にミサイルや戦車、トルコ製の軍用ドローン「バイラクタル」のぬいぐるみが普通に売られていたという。一見すると「軍国主義の洗脳」と受け取られかねない光景だが、東氏は「それは浅はかな見方」と断言する。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 「実際は真逆で、市民が自発的に作って売っている。戦争という異常事態を日常に溶け込ませないと、精神的にやっていけない。悲惨さを乗り越えるための心理的な防衛策なんです」
東氏は、戦時下でもしたたかに生きる市民の姿を、ベトナム戦争を取材した作家・開高健のエピソードと重ね合わせる。しかし、現代のSNS空間は、そうした現実の多面性を削ぎ落とし、単純な正義と悪の図式に回収してしまうと指摘する。
「いまのSNSやメディアは、政治的に『正しいこと』しか言えなくなっている。ウクライナの日常や市民の複雑な感情をそのまま書こうとすると、『ロシアを擁護しているのか』『ウクライナを貶めているのか』と政治判断が先行する。誰もが政治的な踏み絵を迫られる。SNSは構造的に、人間の思考を単純な政治性へ追い込んでいくシステムです」
東氏は、政治家がSNSで声高に叫ぶ「分かりやすい物語」に飛びつくことこそ真の危険だと警告。私たちの思考が、短絡的で大げさなフレーズが飛び交うネット空間に馴らされつつある現状を憂慮する。
「平和ボケ」という言葉はネガティブに使われることが多いが、東氏はこれを「誇るべき達成」と捉える。谷崎潤一郎の文学に学びながら、「ボケていられる日常こそ尊い」と提言する同氏の考えは、戦争体験を持たない世代だからこそ、フィクションやメディアを通じた「バーチャルな戦争体験」から問いを深めてきたからこその重みがある。
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